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女性ソリストが奏でる音色の世界。鈴木加奈子さん

盲導犬ナンシーをパートナーに、プロ・トロンボーンソリストとして、楽曲を発信し続ける鈴木加奈子さん。
トロンボーンの魅力やナンシーへの思いについて、お話を聞きました。

トロンボーン豆知識 トロンボーンは、マウスピースを唇にあてながら振動させて音を出す金管楽器です。左手で楽器を支え、左肩に載せてもちます。
右手はかるくスライドをもち、自由に伸縮して音程を変えていきます。スライドを伸ばすと「低い音」、縮めると「高い音」がでます。重さ約2s
管の長さは約2m20cm。「左手の筋力、肺活量がポイントで、スタミナ勝負。アスリートのようですね(笑)」と話す鈴木さんは、1日も練習を欠かすことがないようです。


●どのようなきっかけでトロンボーンに興味をもったのでしょうか?
中学生の時に吹奏楽部に入部して、初めてトロンボーンの演奏を聞いたのがきっかけでした。力強い音と迫力に圧倒されて、鳥肌がたったのを覚えています。
「かっこいい!面白そう!」。そんな思いで迷わずトロンボーンをやりたいと思いました。ところが、私が最初に担当したのは、同じ金管楽器でもユーフォニアムだったのです。
当時は弱視でしたが、トロンボーンの場合は楽譜との距離があって暗譜しなければ吹けない私に対して、楽譜を近くにおいて読み取ることができるユーフォニアムを、
先生が配慮して選んでくれたからでした。

●でも、あきらめきれなかったんですね。
ええ。やっぱりトロンボーンをやりたい気持ちが強くて、自分が演奏しているのを何回も夢で見るほどでした。そんな日々が続いていた中学2年生の時、
とうとう、祖父にトロンボーンを買ってもらって、音をさぐりながら家で独学で練習していました。そして、高校に入学して希望を主張し、念願かなって
トロンボーンを担当することに。楽譜を覚えるのは大変でしたけど、それ以上にトロンボーンを演奏できることが本当にうれしくて、飛び上がるほどの
大きな喜びを実感しました。

●プロのトロンボーンソリストをめざすようになったのは、音楽大学を卒業されてからですか?
高校、大学を通してずっと大好きなトロンボーンを続けてきて、大学を卒業後は昭和音楽大学付属教室の講師を務めるようになりました。そして、
この8月、お世話になった知人や友人の協力を得て初めてのコンサートを開くことになったんです。その時に、来ていただいたお客様から、
「トロンボーンの音を初めて聞いて驚いた」とか「とても元気が出た」といった言葉をいただいて、「あーこういう世界もあるんだ!」と思いました。
私の演奏を聞いて喜んでくれる人たちがいる。それを肌で感じた時から、トロンボーンソリストとして私ができることをやっていこうと思うようになりました。

●トロンボーンの魅力はどんなところにありますか?
トロンボーンはいろいろの表情をつくれる楽器です。ジャズのような音から人間の声のような音まで本当にさまざまで、私はそんな中で深くて力強い
音色が好きです。よく音域が男性の声に近いと言われますが、それを女性の私が演奏しているのも面白いんじゃないかと思ってます(笑)。
もともとソリストは男性の方が多いですが、逆に女性だから出せる音を追及しながら、演奏とトークでひとつのストーリー性をもたせる自分のスタイルで取り組んでいます。

●今までに経験した印象的な出来事があれば聞かせてください。
オーケストラをバックにソロで演奏した時ですね。テレビ中継もあって、4000人の観衆を前にものすごいプレッシャーで体が震えてしまいましたが、
無事に終えることができた瞬間、涙が止りませんでした。長年の夢でしたし、ソリストとして成長を実感できた忘れられない出来事でした。
トロンボーンに出会えて、本当によかったと改めて思えた瞬間でしたね。

●一方で、講師としてはどんな役割を担っていますか?
今は自分の教室をもって、中学生や高校生から上は70歳の方まで幅広い世代の生徒さんを相手に講師を務めています。生徒さんたちは一人ひとり個性があって、教えること
の難しさを感じています。そのために私自身も勉強を怠らずに、常に生徒さんたちと真剣勝負で向き合ってます。

●ところで、鈴木さんにとって、ナンシーはどんな存在ですか?
体の一部であり、なくてはならない大切なパートナーですね。ナンシーのいない生活は考えられません。コンサートでも何曲か、一緒に登場する場面があります。
そんな時に私は、盲導犬についてのお話をします。盲導犬のことは世の中で知られていないことも多くて、コンサートを通してそれを少しずつ発信していくことで、理解を深めていただければと思っています。
それが盲導犬ユーザーである私に課せられた役割だとも受け止めています。

●これからの目標を聞かせてください。
今の自分が考えていることやテーマにしていることを素直に曲にしていくのが私のスタイルですが、それを聞いてくれる人たちが自分なりの歌詞をつけて歌ってもらえるような、
そんな曲づくりを続けていきたいと思っています。盲導犬を連れた女性トロンボーンソリストとして、私にしかできない音楽を提供していければうれしいですね。

●最後に、クローバーの読者へメッセージをお願いします。
私がトロンボーンソリストとして活動してこられたのは、まわりの人たちの支えや協力があったからです。それがすごく大きいと思っていて、とても感謝しています。みなさんもそんな人と人とのつながりを大切にしてほしいと思います。
私は以前、障がいを理由にあきらめていたことも多くて、できないことばかり数えて落ち込んでいた時期もありました。でも、できる部分を探していくと、得意なことや自信をもてることが見つかるものです。それは誰にでもきっとあると思います。
人はつい、自分とまわりの人たちを比べてしまうことが多いものですが、「私は私」という気持ちで自信をもてることを見つけてそれを磨いていけば、新しい未来が拓けると思います。
焦らず、気持ちにゆとりをもって、自分が希望する就職をめざしてがんばってください。

●プロフィール
鈴木加奈子(すずきかなこ)
昭和音楽大学音楽学部器楽学科(弦・管・打楽器部門)を首席で卒業。プロ・トロンボーンソリストとして、各地で演奏活動を展開中。オリジナル曲も多数制作。ソロ活動のほか、トロンボーン教室講師、コバケンとその仲間たちオーケストラメンバー。
生まれつき視覚にハンディがあり、盲導犬ナンシーとともにスクールコンサートや、福祉講演&コンサートも積極的に行っている。

●ナンシー
性別:メス、体重:30s。現在7歳。2008年8月22日に、盲導犬デビュー。

●コンサート情報
Kanako Suzuki 〜TROMBONE LIVE 2013〜 2013年5月4日(土・祝)開場15:00 開演15:30 杜のホールはしもと 多目的室
〒252-0143 神奈川県相模原市緑区橋本3-28-1 チケット:3000円(全席自由)*3月1日より、予約開始。
お問合わせ:ボーンミュージックオフィス TEL:042-775-3555  FAX:042-772-1080 http://born-music.com/ 

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